琉球新報・8/5社説

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絶滅危惧種指定 ジュゴン保護に英知を
国の天然記念物ジュゴンの生息環境悪化に、あらためて警鐘が鳴らされた。環境省は3日、絶滅の恐れのある野生生物の種をまとめた「新レッドリスト」を発表。その中で、旧リストでは対象外だったジュゴンを評価対象種とし、絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧1A類」に指定した。区分の定義は、国際自然保護連合(IUCN)の基準に合わせており、IA類は「ごく近い将来に野生での絶滅の危機が極めて高いもの」。ジュゴンは普天間飛行場代替施設建設予定地となっている辺野古沖の海域でたびたび目撃されている。今回の指定で、施設建設の影響がさらに憂慮される事態となったともいえよう。ジュゴンは海棲(かいせい)哺乳類の一種で、ジュゴン目(海牛目)ジュゴン科に属する。かつては2属2種だったが、1960年代にステラーカイギュウが絶滅したため、現在はジュゴン(1属1種)のみである。アフリカ東海岸から東シナ海、オーストラリア付近まで広く生息していたが、現在はかなり限られた海域にしかいないという。世界でも合計で10万頭ほど、との推定だ。南西諸島海域が分布の北限だが、既に50頭未満との推計もある。減少の原因としては肉用目的の乱獲、開発による生息地の環境悪化、餌となる海草の生えた藻場の消滅などが指摘されている。ほとんどが、いわば「人災」だ。特に懸念されるのが、辺野古沖で今春から実施されている事前調査の影響。大掛かりな機器設置やそれに伴う騒音が、ジュゴンの生息環境に、決して好ましい結果をもたらさないことは明白だ。音には敏感で、船のエンジン音を聞くと、藻場に近寄らなくなる恐れもある。さらに、施設建設となれば、壊滅的な影響は避けられない。既に日本哺乳類学会、水産庁でも「絶滅危惧種」として指定しており、今回の環境省の指定は「遅すぎたぐらい」との指摘もある。いずれにせよ、保護に向けて一歩前進とも評価できる。後は指定のみで終わるのではなく、どう具体的に保護策を取っていくか。人類の英知が試される。